桂林足利ダム。ご飯1キロの上にハンバーグと唐揚げが乗る

足利「青竹手打ちラーメン桂林」──自宅に米900キロ。値上げを我慢して出す1キロ超えのデカ盛り

栃木県足利市の家族経営の中華料理店。青竹で打つ自家製麺、全ラーメンにつくお粥、そして特盛2.5キロ・ギガメニュー3キロ超のデカ盛り。米は自宅にほぼ1トン。16歳から厨房に立つ2代目店主の一日に密着した。

栃木県足利市江川町。国道沿いに約25台分の駐車場を持つ中華料理店に、山梨から、群馬から、茨城から客がやって来る。青竹手打ちラーメン 桂林。創業1989年、家族経営の店だ。

看板はラーメンとチャーハン。ただし、この店は「特盛」から様子がおかしくなる。ご飯ものの特盛で約2.5キロ、ギガチャーハンやギガラーメンになると1人前がスープ込みで3キロを超える。

そして店主は、値上げをほとんどしていない。米が高騰しても、である。「正直、苦しくてしょうがないんすけど」と言いながら、去年に一度上げたきりだ。

動画の目次

時間

内容

0:45

朝の仕込み──寸胴に水を張る

1:07

スープは鶏ガラとゲンコツを50:50

1:45

全ラーメンにつくお粥を仕込む

3:08

製麺機に小麦粉を入れる

4:09

青竹の麺棒で生地を踏み固める

5:09

麺の原価は1玉10円未満

8:20

豚肉5キロの下味と油通し

10:30

自宅に保管された米900キロ

12:03

11:30 開店

16:05

ギガチャーハンを高く盛る

28:02

ギガラーメン(麺3玉)

35:43

桂林足利ダムの完成

40:17

38年目の店主の言葉

16歳で厨房に入った2代目

店主の柿沼さんは、この店の2代目にあたる。厨房に入ったのは16歳のときだ。

16歳からここに入りっぱなんで。高校は行ってたっすけど、学校終わってここに入ってって感じで。16からずっとやってますね。

飲食をやりたいという強い気持ちがあったわけではない、と本人は言う。むしろ父親からは、はっきり止められていた。

親父には継ぐな継ぐなって言われてたんすよ。こんな大変な仕事、継がない方がいいって。継ぐな継ぐなって言われてたんすけど、俺がやりてぇって、やる感じになりました。

ラーメンに、必ずお粥がつく

桂林のラーメンには、全品にお粥が付いてくる。ラーメン屋としては珍しい。

桂林は、ウチはラーメンに全部お粥がつくんすよ。それで、全部付けるお粥を作ってます。このお粥がかなり人気で、結構支持を受けてます。

きっかけは、父親の修業先だった。

自分の親父が中華街の方で修行してて、それでお粥が美味しかったんで。

朝の仕込みは、寸胴に水を張るところから始まる。鶏ガラと、豚のゲンコツ。比率はおよそ50対50。その横で、中華鍋を高火力にかけてお粥を仕込む。

スープの仕込みに使う豚のゲンコツ
スープは鶏ガラと豚のゲンコツを50:50で。

青竹で踏む、1玉10円の自家製麺

屋号のとおり、麺は自家製だ。製麺機に小麦粉と混合水を入れて生地をまとめ、取り出した塊を、青竹の麺棒で踏み固める。

青竹の麺棒で生地を踏み固める
青竹の麺棒で生地を踏む。ヒビが消えるまで繰り返す。
最初まとめた時にヒビが入ってたのが、無くなって来た感じあるじゃないですか。でも、ここでちょっとヒビが入ってたりすると、麺打った時にやっぱそっからヒビが割れて来ちゃって、麺が切れちゃうので。

踏み終えた生地は、茹で麺機の上に置いて温めながら寝かせる。常温なら4時間かかるところが、これで2時間で済むという。温まった生地は伸ばしやすくなる。

工程

やっていること

ポイント

生地づくり

製麺機に小麦粉と混合水

土日は3〜4回、粉から仕込み直す

踏み

青竹の麺棒で踏み固める

ヒビが消えるまで。残ると麺が切れる

寝かせ

茹で麺機の上で温めながら

常温4時間 → 約2時間に短縮

伸ばし

15分ほどかけて手で伸ばす

厚い部分をならし、打ち粉を振る

自家製にする理由は、はっきりしている。

(原価は)一玉10円かかってないっす。製麺屋さんで買うと一玉50円とか。原価、全然違うんすよね。

ただし、浮いた金額は手間として戻ってくる。

手間は増えますよ、本当に。あと、どうしても限界がありますね。その人の体力だってありますし。1日で打てる量っていうのが、やっぱり無限に打てるわけじゃないんで。頑張って打っても250食ぐらいが限度になって来ちゃうかなっていう。

平日でおよそ160玉。それが、この店の一日の上限を決めている。

自宅に、米900キロ

ランチだけで80合を炊く。それでも足りない日がある。大型連休には、1日で300合ほど炊くという。

だから米の高騰は、そのまま経営に効いてくる。

モロに打撃です。値上げもしないといけないんすけどね。ちょっとずつはしてるんすけど、やりすぎてもなっていうんで。だから去年1回上げて、それっきりっすね。

店に入りきらない米は、自宅に積んである。ひと山で180キロ。その奥に、さらに30袋。

自宅に積まれた米袋
店に入りきらない米は自宅に。合わせてほぼ1トン。
900キロ。今、米は一応ありますね。……これ以上置いたら床が抜けちゃうんじゃないかっていうんで、今ちょっと外に6袋だけあるんすよ。雨に当たんないように。

合わせて、ほぼ1トン。1日に2袋、60キロを使ってしまう日もある。

パートさん達3人を雇うのに必死です。火の車なんで。

「特盛から、様子がおかしくなる」

一番よく出るのは、とろみラーメン(酸辣湯麺)。次いで醤油ラーメン、チャーハン、エビチャーハンだという。ここまでは、普通の町中華の話だ。

普通盛り、大盛りは結構そのまんまなんですけど、特盛からちょっと様子はおかしくなるんですけど。これなんかは結構、量が大体2.5キロぐらいあるものなんで。

ご飯の量を、店主の言葉から整理するとこうなる。

呼び名

ご飯の量の目安

ランチセットの半チャーハン

約400g

単品の半チャーハン

約500g

普通盛り

約600〜700g

大盛り

約1kg

特盛

約2.5kg

単品の半チャーハンが、ランチセットの半チャーハンより多い。夜に半チャーハンだけ食べたい客が多いから、その人たちのために量を増やしたのだという。この日、それを頼んだ客はこう言った。「半チャーハン頼んだんすけど、普通盛りより多かったっす」。

量が量なので、シェアは歓迎されている。

家族で来てシェアとか、そういうのも全然OKなんで。3人で来てこれを1つ食べるでもいいですし、4人で来て1つで食べるでもいいですし。何人でも大丈夫です。

厨房は10合単位で回る

中華鍋で炒められるチャーハン
チャーハンは1回に10合。卵15個を溶いて一気に炒める。

チャーハンは、1回に10合。卵は15個。ピーク時にはそれを何度も繰り返す。「またチャーハンです。今10合終わりました」──厨房には注文票が並び、ラーメン、タンメン、ヤキソバ、丼ものが並行して進む。

ギガチャーハン、ギガラーメン、そして「足利ダム」

ギガチャーハン2200円は、円錐形に高く高く盛り上げ、崩れないように串を刺し、回転台に乗せて運ばれる。テーブルに着いた瞬間、店内がざわつく。

円錐形に高く盛られたギガチャーハン
ギガチャーハンは串で支え、回転台で運ぶ。

この日の挑戦者は、2リットルの「特大りんごジュース」も一緒に注文した。ペットボトル2本分である。

ギガチャーハンと特大りんごジュースを前にした客
2リットルの特大りんごジュースつき。完食は15時36分だった。

ギガラーメン(麺3玉)は2300円、チャレンジ価格2000円。重さを聞かれた店主の答えは、

6キロじゃないっすかね。3対3ぐらいっすかね。スープ込みで3キロなんで、(2つで)6キロくらいだと思います。
ギガラーメンのチャーシューと味玉
麺3玉。スープ込みで1杯あたり約3キロ。

そして名物が「桂林足利ダム」1300円。組み立てを順に書くとこうなる──ご飯1キロをドーナツ型に成形し、キクラゲ入りの溶き卵を流し込み、唐揚げを積み、ハンバーグを乗せ、とろみラーメンの餡をかけ、ケチャップを絞り、最後に小さなパラソルを立てる。

桂林足利ダムのハンバーグと味玉
巨大なお子様ランチ、あるいはダム。ご飯だけで1キロ。

この日、インスタで店を知って茨城から来た家族連れが挑戦した。唐揚げから攻めるという作戦通りに序盤は快調だったが、20分を過ぎたあたりで手が止まった。

いやー、キツかったっす。……悔しくはないっす。久しぶりに頑張って、これがキツかった。美味しいんすけど、餡がやっぱり後半になって、段々効いて来ましたね。

持ち帰り用のパックを買っていった。店側もそれを織り込んでいる。長時間かけて食べる客への配慮も、見ていて伝わってくる。

メニューと値段(動画撮影時点)

メニュー

価格

ラーメン/塩ラーメン/みそラーメン

各800円

とろみラーメン(酸辣湯麺)

900円

五目チャーハン

900円

エビチャーハン

1000円

五目ヤキソバ

900円

野菜カユ

773円

ギョーザ/から揚げ5個

446円/800円

ねぎ塩豚丼/卵々豚丼

1000円/1300円

桂林足利ダム

1300円

ジャンボカレー(2kg)

2000円

ギガチャーハン/ギガヤキソバ

各2200円

ギガラーメン(3玉)

2300円(チャレンジ2000円)

ギガから揚げ丼

2700円

桂林JAPAN/どん・ドン・どん

4500円/5000円

ご飯物 大盛り/特盛

+200円/+400円

麺類 大盛り/特盛

+100円/+250円

38年目に、店主が言うこと

今38年目になりますね。これを頑張りたいっていうのは、特には正直ないです。ないんですけど、常に変わらない味。何も変えずに今後もやっていくことを、一生懸命、常に毎日やってる感じですね。

原価を削り、値上げを我慢し、量を落とさない。その帳尻は、どこかで誰かが払うことになる。

正直、苦しくてしょうがないんすけど。やっぱりお客さんファーストのところもあるんで、お客さんが喜んでくれればそれでいいっていうところもあるんですけど、たまにのちょっとだけの値上げは許してねって思います。

スタッフについては、こう言った。

今いるパートさん達、スタッフには、やっぱりこう、桂林を明るくしてくれてる人たちなので。その人達には常に感謝しなきゃなって気持ちはありますね。

厨房にいたスタッフの1人は、入って半年ちょっと。もともとは週に何度も通っていた常連客で、「ちょっとやってみようかなってところで、前の仕事辞めて」この店に入った。

最後に、客に向けて。

テレビとかYouTubeでの露出が多くなって、「お客さん、いっつも混んでるよね」って言ってきてくれるんですけど、あの、全然そんなことないので。入れるよっていうのは、みんな知って欲しいと思います。みんな待ってます。
店の入口でアーチを作って見送るスタッフ
帰り際、スタッフ全員がアーチを作って見送る。

店舗情報

「中華料理 手打ちラーメン 桂林」の看板
国道沿いの看板。駐車場は約25台分。

項目

内容

店名

青竹手打ちラーメン 桂林(看板は「中華料理 手打ちラーメン 桂林」)

住所

栃木県足利市江川町1-5-8

開店

11:30(動画撮影時点)

駐車場

約25台

創業

1989年(店主は取材時に「今38年目」と話している)

名物

とろみラーメン、チャーハン、ギガメニュー各種、桂林足利ダム

シェア

可(デカ盛りメニューにはシェア価格の設定あり)

支払い・持ち帰り

食べきれない分の持ち帰りパックあり

営業時間・定休日は動画からは確認できません。価格も撮影時点のものです。訪問前に最新情報の確認を。

動画で見る

ここまで書いてきたが、文字にすると落ちるものがある。10合のチャーハンが中華鍋の中でほぐれていく音、青竹が生地を押し返す鈍い手応え、円錐形のチャーハンが運ばれてきた瞬間の店内のざわめき。

特に、ギガチャーハンを盛り上げていく16:05以降と、足利ダムが組み上がっていく35:07以降は、映像で見たほうがいい。

No comments yet