大島「そばうどん処 福太郎」──深夜0時47分に出勤、朝5時開店。元建設業の店主が揚げる150円の天ぷら

都営新宿線・大島駅から徒歩1分、朝5時開店の立ち食いそば店。店主は深夜0時47分に自転車で店に入り、開店まで一人で天ぷらを揚げ続ける。前職は建設業30年、飲食は未経験だった。客の9割が常連だという。

都営新宿線の大島駅から徒歩1分。新大橋通りと丸八通りが交わるあたりに、朝5時に暖簾を出す立ち食いそば屋がある。そばうどん処 福太郎。カウンターは5人でいっぱいになる小さな店だ。

店主が店に入るのは、深夜0時47分である。自転車でシャッターの前に着き、鍵を開け、電気をつけ、そこから一人で天ぷらを揚げ続ける。開店までの4時間あまり、厨房はずっと動いている。

そして天ぷらは1枚150円、そばは一杯400円。店主はそれを「ほとんど儲けないよ、これ」と笑う。

動画の目次

時間

内容

0:20

店主が自転車で出勤

0:59

仕込み開始──前日のカレーを温める

2:13

天ぷらの仕込み(春菊天)

4:39

深夜2時、奥様が出勤

7:14

紅生姜天

10:51

開店準備

11:58

5:00 開店

12:11

メニュー

13:11

1人目の客

14:58

タクシー運転手が来店

21:37

常連さんインタビュー

23:41

店主インタビュー

深夜0時47分、自転車で出勤

動画は大島駅の駅名標から始まる。都営新宿線でひと駅ずれれば錦糸町、住宅と町工場と物流の車が混ざる一帯だ。

都営新宿線・大島駅。店は駅から徒歩1分

店主が到着するのは0時47分。まだ日付が変わったばかりの時間である。シャッターを上げ、電気をつける。厨房はよく片付いていて、静かだ。

最初の仕事はカレーだった。前日に仕込んでおいた鍋を火にかけ、温め直して保温器に移す。じゃがいもと肉がごろごろ入った自家製のポークカレーで、テレビの朝の情報番組で紹介されたこともあるという。

建設業30年、飲食は未経験だった

店主は56歳。この店を始める前は、建設業を30年ほどやっていた。

やめたときに、周りから声がかかったのだという。

建設業やめた時にさ、「蕎麦屋でもやれば」みたいな。「手伝ってやるから」って言って、たまたま。

飲食の経験は、そのときゼロだった。「未経験だよ、飲食業は」。いまその人が、朝5時から14時まで、一人で天ぷらを揚げている。

仕込みは天ぷらから始まる

1時を過ぎると天ぷらの仕込みに入る。天ぷら粉を水と合わせ、鍋に油を注いで温める。

最初は春菊天だ。衣を合わせ、少しずつ油に落とし、菜箸で押さえながら丸く形を整えていく。揚がったものは天ぷらブースに並べていく。

春菊天を揚げる。丸く形を整えながら油に沈める

形にこだわっているのか、と聞かれた店主の返事は短い。「俺はね」。

げそは、まず並べて水分を拭き取り、塩をふって揉み込み、少し寝かせる。そのあと粉をふり、衣と合わせて揚げる。足を広げて油に沈めると、揚がるにつれて放射状に開いていく。

深夜2時、奥様が出勤

2時になると奥様が店に入る。ちくわ天を揚げ、衣を足してふっくらさせ、ひっくり返しながら仕上げる。このボリュームで100円だ。

何時に寝ているのか、と聞かれて、二人の答えが重なる。

妻)過酷だよね 店)過酷だよ

「9時には寝たいところだよね」と店主は言う。睡眠は3時間ほど。本人はあまり気にしていない。

俺ってあんまり寝れないタイプなのよ。起きちゃう、慣れちゃって。

昼夜については、ひとこと。「逆転してるよ、もう」。

紅生姜、かき揚げ、そしておにぎり

3時前後、紅生姜天にかかる。赤が鮮やかで、天ぷらブースに並べると一気に華やぐ。常連にはこれを目当てに来る人もいる。

紅生姜天。揚げ上がりの赤が鮮やかだ

続いてかき揚げ。玉ねぎを刻み、えびと合わせ、ボウルで衣とまとめて揚げる。そばにもうどんにも合う、この店の看板だ。

おすすめの食べ方を聞くと、そばの上ではなく別の答えが返ってきた。

ほんとは揚げたてを塩で食ったらうまいよ。めっちゃうまいよ、揚げたて。

最後におにぎり。しゃけとこぶ、それぞれ手で握って並べていく。仕込みが終わるのは、開店の15分ほど前だ。

揚げ上がった天ぷらが並ぶ。かき揚げ、紅生姜天、ちくわ天、春菊天、コロッケ

「ほとんど儲けないよ、これ」

この店で一番安いのは、たぶん利益率だ。げそ天そばは600円。げそは人気商品だが、店主は原価の話を隠さない。

げそも人気なの。げそ儲けないもんだって。ほとんど儲けないよこれ。別に儲けなくてもいいんじゃないかって。

成り立っている理由は、客層にある。「9割が常連さんなのね」。朝と昼の両方に来る人もいるという。

やっぱり安くて量が多くて美味しいって食べさせるのが一番。じゃないとできないよね、飲食店って。だって14時間いるんだよ、この中に。

立ち食いそばでありながら、出汁は自分で引き、かえしも自分で作る。手を抜けば楽になるが、そこは動かさない。

5:00、開店

暖簾をかけ、メニュー表を外に出し、旗を伸ばし、外の灯りをつける。5時ちょうど、店が開く。

5:00開店。カウンターは5席、卓上に調味料が並ぶ

1人目の客はかき揚げそば大盛りとげそ天。次に、店の前にタクシーが停まって運転手が入り、カレーライスを頼む。コロッケうどんとおにぎり2個の持ち帰り、紅生姜天そば、おいなりさんとおにぎり──朝の客は、みんな速い。

常連の一人は、この店の天ぷらについてこう話している。

普通の立ち食いそば屋だと、ベチョッとした感じになっちゃうじゃない。ここはサクサクだからね。大きさも大きいからね。

別の常連は、春菊天そばを食べたあとで「1000円出してもお釣りがくるくらい」と言った。

メニュー

品目

価格

かき揚げ(そば・うどん)

550円

春菊天(そば・うどん)

550円

げそ天(そば・うどん)

600円

カレー(そば・うどん)

650円

自家製ポークカレーライス

650円

カツカレーライス

850円

ミニかき揚げ丼セット

650円

天ぷら各種(かき揚げ・春菊天・紅生姜天ほか)

各150円

コロッケ/生卵/ゆで卵

各100円

おにぎり(しゃけ・こぶ)

150円

おいなりさん2個

150円

支払いは現金のみ。

丼を運ぶ店主。営業は5時から14時まで

「全汁」

この店には、店主が心待ちにしている光景がある。つゆまで飲み干して帰る客のことを、店では「全汁」と呼んでいる。

スープもさ、綺麗に全部飲み干してってくれたりね。洗い物見ると、それが楽しみだよ。「わぁ、全部スープまで綺麗に飲んでくれた」って。

動画の最後、モチベーションを聞かれた店主の答えは、値段の話に戻っていく。

味を落とさず、天ぷらも大きさも変えず、値段も変えず、これからも頑張っていきたい。

店舗情報

項目

内容

店名

そばうどん処 福太郎

住所

東京都江東区大島6-9-15 1F

アクセス

都営新宿線・大島駅から徒歩1分/新大橋通りと丸八通りの交差点付近

営業時間

5:00〜14:00

定休日

土・日・祝

席数

カウンター5席

支払い

現金のみ

営業時間・定休日・価格はいずれも動画公開時点の情報です。訪問前に最新情報の確認を。

動画で見る

ここまで書いてきたが、深夜の厨房の音と、揚げ場の手つきだけは文字にすると痩せる。

一人で天ぷらを揚げ続ける4時間、2時に入ってくる奥様との無言の分担、そして5時に開いた扉から次々に入ってくる朝の客。その速度は映像でしか伝わらない。

常連さんが語る21:37以降と、店主が最後に話す23:41からは、ぜひ動画で。

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