洋食バル ちょーと亭の三元豚のトンテキ

荏原町「洋食バル ちょーと亭」──駅から15秒、11坪12席を1人で回す31歳店主の1日17時間

東急大井町線・荏原町駅から徒歩15秒。11坪12席の洋食バルを、長崎出身31歳の女性店主がひとりで回す。朝10時に入り、深夜3〜4時まで仕込みと事務。ポテトサラダもコーンスープも一から作る、開店半年の店の一日に密着した。

東急大井町線・荏原町駅の改札を出て、歩いて15秒。「走れば5秒くらい」と店主は言う。その距離にある11坪・12席の洋食屋を、31歳の女性がひとりで回している。

洋食バル ちょーと亭。オープンは2025年12月で、この撮影時点ではまだ開店から半年ほどだ。店主の岩碕さんは朝10時前後に店に入り、11時30分に開店。営業を終えた22時過ぎから仕込みと事務作業を始め、終わるのは深夜3時か4時になる。動画の冒頭では「1日17時間」と紹介されている。

そのうえで、ポテトサラダも、コーンスープも、デミグラスも、デザートのガトーショコラも、既製品を使わない。

動画の目次

時間

内容

0:47

岩碕さんが出勤。鍵と格闘する

1:51

長崎から東京へ、間借りからの独立

3:11

羽釜と山形「つや姫」

4:07

ワンオペの現状と悩み

4:58

厚切りトンテキの仕込み

5:25

手作りポテトサラダ

8:00

好きな食べ物と「ちょーと亭」の由来

10:29

既製品を使わない理由

11:20

11坪の店の集客

13:16

ハンバーグは豚多めの合挽き

15:43

深夜3〜4時まで続く仕込みと事務

17:28

11:30 開店

17:50

メニューと価格

23:38

12:15 満席

33:10

目標は2〜3店舗

長崎から東京へ、間借りを経て独立

店主の岩碕さんは31歳。出身は長崎県で、18歳で東京に出てきた。

福岡はたまに長崎の人が遊びに行くとしたら福岡行くじゃないですか。で、何回も行ってたから、東京行ってみようかなって思いました。でもまさか東京でお店を出すとは思わなかったですけどね。

18歳から20歳まで学校に通い、そのあと働いた。独立したのは29歳のとき。ただ、いきなり店を構えたわけではない。物件を探しながら、1年ほど間借りで営業していた。

間借りでちょっと自分のやりたいメニューとかやったりして。間借りは辞めようと思えばすぐ辞められるので。色々やってみて、お店出した時のためになりましたね。

開業資金は自己資金だという。「いけるって自信あったんですか?」と聞かれて、返ってきた答えは短い。

そんなの全然ないです。勢いで来ました。

物件は「範囲を広げたら」見つかった

最初は都心で物件を探していた。

やっぱり高くて。高いし、無いし、競合に負けるしで。ちょっと範囲広げてみようって思ったら、たまたまここ見つけて来ました。

荏原町には来たこともなかった。2025年9月に物件が決まり、12月にオープンしている。駅から徒歩15秒という立地は、探して見つけたというより、たまたま当たったものだ。

洋食バル ちょーと亭の入口。木の扉に「Open」の札が下がる

「洋食屋」になったのは、お客さんがそう書いたから

元々、何の店をやるかは決めていなかったという。定食屋のつもりでメニューを考え、自分の好きなものを並べた。トンテキ、オムライス、ハンバーグ。

自分が好きなトンテキ、オムライス、ハンバーグを出したら、食べログにお客さんが「洋食店さん」って書いてて。だから洋食屋さんにしました。

業態を決めたのは店主ではなく、客のレビューだった。

店名の「ちょーと亭」は、飼っている猫の名前から取っている。「ちょーとくん。ちょーかわいいですよ。親バカなだけです」。

ちなみに、パティシエになろうと思ったのは幼稚園の頃だという。両親は飲食とは無関係で、父はサラリーマン、母は専業主婦。ただ、母がお菓子作りを好きで、家には道具がたくさんあった。デザートのガトーショコラが自家製なのは、その頃の名残なのかもしれない。

一日は米から始まる

羽釜で炊くための米を量る

岩碕さんは店に着くと、テーブルを拭き上げ、コップをセットし、それから仕込みに入る。

最初は米だ。山形県の「つや姫」を、羽釜で炊く。

珍しいですね、羽釜。そうですよね、結構大変です。炊くのが急いで炊かないといけないので、私がドタバタしてると炊き忘れたりとかします。

一釜で9〜10人分。席が12席なので、ちょうどいいのだという。営業中はなくなったら炊き、なくなったら炊きを繰り返す。できるだけ炊き立てを出すためだ。

素材

産地・仕様

使い道

山形県産「つや姫」

羽釜で炊く(1釜9〜10人分)

茨城県産「奥久慈卵」

1日40〜50個。オムライスの卵液に

豚肉

三元豚

厚さのあるトンテキ(1枚170g前後)

ひき肉

牛豚合挽(豚の割合が多い)

ハンバーグ1日20〜30個

じゃがいも

メークイン

1つずつ手で剥くポテトサラダ

仕込みは、ほとんどが手作業

塊肉から厚切りにした豚肉を仕込む店主

一番出るメニューはトンテキだ。塊肉から分厚く切り出し、一枚ずつ筋切りしていく。「これで何グラムくらい?」と聞かれ、「170くらいはあると思います」。特に男性の人気が高いという。

ポテトサラダは、メークインを1つずつ手で剥くところから始まる。茹でて潰し、マヨネーズを混ぜ、塩もみしたきゅうりと玉ねぎ、フライパンで炒めたハムを合わせる。レシピはすべて岩碕さん自身が考案したものだ。

じゃがいもを1つずつ手で剥く

オムライスの卵液は、奥久慈卵を1個ずつ割り、牛乳を加えてブレンダーで溶きほぐす。1日で40〜50個。中に入れる鶏肉は国産を小さなサイコロ状に切って炒め、玉ねぎはフードプロセッサーでみじん切りにしてじっくり炒め、ケチャップと合わせる。

ハンバーグは牛と豚の合挽き。割合は豚が多い。「そっちの方が好きなので」。1日20〜30個を、1つずつグラムを量って成形し、表面を焼いてから鉄板に並べる。

表面を焼いたハンバーグ。1日20〜30個を仕込む

なぜここまでやるのか。答えは一行だった。

あんまり既製品使ってないですね。そっちの方がやっぱり美味しいから。

作る側の理屈ではなく、食べる側の理屈で説明する。

ワンオペ、そして深夜3時4時

店舗面積

11坪

席数

12席

スタッフ

店主1人(アルバイト・パートなし)

出勤

朝10時前後

営業

11:30〜

仕込み・片付け・事務

営業後22時過ぎ〜深夜3〜4時

アルバイトもパートもいない。人を雇うかどうかは、いまも決めかねている。

人を雇うか雇わないか、今悩み中って感じです。……本当どうしようって感じですね。

あえてワンオペにしている理由を聞かれると、こう答えている。

なんか全然ちっちゃいお店なので。まだ始めたばっかりで、人を雇うって特に考えていなかったぐらいですかね。

朝は「全然遅い」という。10時ごろに来ることが多い。夜型なのだ。

大体朝はゆったりめにして、夜は3時4時とかまで仕込みしたり片付けしたり、事務作業やって。

「めっちゃ働くじゃないですか!」と言われて、「そうなんですよ」と返す。声のトーンは変わらない。

コンロと流しが一列に並ぶ厨房。ここを1人で回す

本人いわく、表情があまり出ないと言われるらしい。撮影初日、落ち着いて見えたので聞いてみると、返ってきたのは「いや、今めっちゃお腹痛いです」だった。

集客はSNSだけ。きっかけは開店3日目

11坪の店に、どうやって人を集めているのか。答えは短い。SNSだけだ。食べログには登録しているが、それ以外に集客はしていない。

集客は最初不安でしたけど、オープンして三日目くらいの時にシェアレストランの社長さんが来てくれて、その方がインスタのリールを上げたら、それがすごいバズって。お客さんいっぱい来て。

客層は昼が多い。夜は食事をしながら飲む客が中心で、滞在時間が長い。そのぶん回転はしない。

常連さんは、やっと最近ついてきたかなっていう感じではあります。

11:30、開店

看板を店の前に出し、11時30分に開ける。ランチタイムの予約は11:30〜の回のみ受け付けている。

店頭の黒板メニュー。価格は撮影時点のもの

メニュー(撮影時点)

価格

チーズハンバーグ

1350円

三元豚のトンテキ

1350円

ケチャップオムライス

1350円

デミグラスオムライス

1450円

チーズハンバーグ&カニクリームコロッケ

1550円

目玉焼きのせハンバーグ&カニクリームコロッケ

1550円

Wハンバーグ

1700円

追加:目玉焼き/ハンバーグ

150円/400円

アペロセット(前菜・温菜・ドリンク付き)

2000円

前菜盛り合わせ(一人前)

990円

半熟卵のせポテトサラダ

750円

ちょーと亭グリーンサラダ

1080円

洋食屋さんのコーンスープ

600円

生ビール

700円

白ワイン(グラス)

750円〜

青森県産リンゴジュース/烏龍茶

650円/450円

最初の客が入り、メニューを眺め、チーズハンバーグと生ビールを頼む。昼からビールが出る店だ。

12時15分、12席が埋まった店内

12時15分、店内は満席になる。ドアに「満席中」の張り紙が貼られる。12時47分の時点でも、まだ埋まったままだ。

この間、岩碕さんはコロッケを揚げ、ご飯を炊き、ハンバーグにソースをかけ、コーンスープを注ぎ、注文を取り、皿を下げている。すべてひとりで、順番に、続けて。

ケチャップオムライス 1350円

オムライスは、フライパンにバターとトマトソース、ご飯を入れて手早く炒め、別のフライパンで卵液をゆすりながら固め、ケチャップライスの上にかぶせて包む。ケチャップをかけ、パセリを添えて完成する。

デミグラスオムライス 1450円。ナイフを入れると中はとろとろ

デミグラスオムライスにナイフを入れると、ぷるぷるの卵の下からとろとろが出てくる。ソースは濃厚で、スプーンが止まらない。

この日初めて来たという客に話を聞いている。

YouTubeかインスタかな、なんかで見た気がして。なかなか機会がなかったんですけど、たまたまこの辺に来る用事があったので来てみました。

目標は、2〜3店舗

ランチ営業が終わり、最後の客が帰ったあとで、目標を聞いている。

2〜3店舗お店を出したいです。

いつまでに、という期限は決めていない。

とりあえずまだ半年なので、ここオープンして。もう少し1年くらいはここをもっと頑張って、ゆくゆくはしたいと思ってます。

最後に、いつも来る客への一言を求められて、こう答えている。

本当毎日たくさんの方にお越しいただいて、なんとか頑張れてます。これからもよろしくお願いします。

店舗情報

店名

洋食バル ちょーと亭

住所

東京都品川区中延5-7-4 魚染ビル202

アクセス

東急大井町線 荏原町駅より徒歩約15秒

営業時間

11:30〜(ランチは11:30〜15:30/動画撮影時点)

定休日

火曜日(月曜はランチのみの表記あり)

席数

12席(11坪)

予約

ランチタイムは11:30〜の回のみ可

創業

2025年12月

営業時間・定休日・価格は撮影時点のものです。変更されることがあるため、訪問前に最新情報の確認を。

動画で見る

ここまで書いてきたが、文字にすると抜け落ちるものがある。ひとりで12席を回すときの、手の速さだ。

オムレツをゆすりながら次の注文を受け、ご飯を炊きながらコロッケを揚げ、その合間に皿を下げる。それでいて、動きに焦りがない。ただ、止まらないだけだ。

満席になる23:38以降、そしてオムレツを包む24:22あたりは、ぜひ動画で。

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