東武スカイツリーライン(伊勢崎線)草加駅の改札を出て、徒歩1分。駅前のビルの1階に、「手打らーめん 珍來」の赤い看板が間口いっぱいに横へ伸びている。カウンターとテーブルを合わせて53席。街中華としては、かなり大きい。
創業は1928年。店は「日本最古のラーメンチェーン」を名乗る。再来年、2028年で100年になる。
その厨房を任されているのは、勤続20年、40歳の店長だ。そして彼は、この店を出ていく準備をしている。
動画の目次
時間 | 内容 |
|---|---|
1:04 | 創業1928年、珍來総本店 草加駅前店 |
1:39 | 焼きそば麺の仕込み(1食250g) |
2:45 | スープの仕込み |
5:01 | 1日の売り上げ |
7:30 | 餃子は1日500個、すべて手包み |
8:34 | 米は1日40キロ |
12:28 | まかないのデザートは納豆 |
12:39 | 朝礼、そして11:00開店 |
15:44 | 2分で上がるチャーハン |
22:52 | チャーハン大盛 |
26:52 | 11:43 満席、そしてチャーハンラッシュ |
29:57 | 店長の目標 |
駅前で98年
珍來総本店 草加駅前店。埼玉県草加市高砂、駅を出て人の流れがそのまま続く場所に、この店はある。創業1928年(昭和3年)。動画のなかで店は「日本最古のラーメンチェーン」と紹介される。
直営店はいま5店舗。社長は創業者の三代目にあたる。
うちの社長がドンなんで。創業者の3代目なんで。再来年で100年。
珍來の名前を掲げる店は、直営以外にも広く点在している。所沢から持ち帰りの餃子を買いに来ていた客は、こう言っていた。「店によって味がちょっと違うので」。そのうえで、草加が一番だと思う、と。通い始めたのは10歳くらいから。つまり40年になる。
朝7時、誰よりも早く
店長は三瓶文宏さん、40歳。草加の店で入社し、隣駅・獨協大学前の珍來、足立区・梅島の珍來を経て、また草加に戻ってきた。キャリアはこの会社だけで20年になる。
出勤は7時すぎ。誰よりも早く店に入り、電気をつけるところから一日が始まる。
最初の仕事は焼きそば麺の仕込みだ。ひと掴みで1食分250gを取り分けていく。計量はしない。
もう……まあ、20年やってたらわかりますよ。
スープは、前日から始まっている
この店のスープは、前の日に仕込まれる。豚ガラ、豚骨、野菜、昆布を3時間煮込んだものが、翌朝の出発点になる。
朝、そこに湯を足して火を入れ直す。浮いてくるアクを網ですくう。丁寧に取るほどスープは透き通る。
別の鍋では鶏ガラを軽く茹でている。茹でた鶏ガラをスープに移して5分ほど置くと、表面が黄色くなる。鶏油だ。これをすくって取り、さらに網でこす。最後に野菜の切れはしを加えて、小さい寸胴に取り分ける。
火加減には決まりがある。
沸騰して油が出たら、火をもう弱火にしちゃうんですよ。そうするとこのスープを維持できるんで。僕が入った時から同じ作り方なんで。
ラーメンの醤油ダレは別に用意する。ほんだしや味の素で味を整え、温まったら網でこす。野菜はすべて国産で、毎朝、八百屋が店まで届けに来る。
工程 | 使うもの | 行き先 |
|---|---|---|
前日の仕込み | 豚ガラ・豚骨・野菜・昆布を3時間 | 翌日のスープの土台 |
当日の炊き直し | 湯を足す/アクを取る | 透き通ったスープへ |
鶏ガラ | 軽く茹でてから投入、5分 | 鶏油を取り分ける |
仕上げ | 網でこす/野菜の切れはしを追加 | 小分けの寸胴 |
醤油ダレ | ほんだし・味の素などで調味 | ラーメン |
餃子は1日500個、全部手で包む
餡はキャベツと豚肉、あとは調味料だけ。具は国産にこだわっている、と店長は言う。ヘラで餡をすくい、手早く包む。これが1日およそ500個。すべて手包みだ。
うち餃子、結構大きいんですよ。
包んでいるのは外国人スタッフだった。日本語がまだ得意ではないと笑いながら、手は止まらない。「みんな優しい。店長も優しい。楽しい」。
持ち帰り用の餃子は開店前に焼く。餃子焼器に並べ、水を入れて蓋をし、5分ほど蒸し焼きにする。湯を捨て、上からラードをかけて焼き上げる。
焼き上がった餃子は容器に詰められ、店先のショーケースに置かれる。開店と同時に、これを目当てにした客が来る。

米40キロ、チャーハン100食
米は店で精米する。1日に使う量は40キロ。ただし1度に炊けるのは5キロなので、1日8回、炊飯を繰り返すことになる。
チャーハンがやっぱりここ、1日100個くらい出るんで。それで米、大体40キロ。
そのチャーハンは、卵、ご飯、具と調味料の順で入り、2分で仕上がる。
1日の数字 | 量 |
|---|---|
米 | 40キロ(5キロ×8回) |
チャーハン | 約100食 |
餃子 | 約500個(すべて手包み) |
売り上げ | 平日約40万円/金・土・日45〜50万円 |
月商 | 約1300万円 |
まかないのデザートは納豆
11時31分、厨房の準備が終わる。ここでまかないになる。この日はメニューにないホイコーローだった。野菜とタレを鍋に入れ、薄切り肉を加えて炒める。
7時から働き続けた店長が、やっと座る。食べる速度がとにかく速い。完食かと思ったところで、デザートが出てくる。納豆だった。これも流し込むように食べ終える。
12時39分、朝礼。「来週から冷やしも始まりますから」。気をつけ、礼。
今日も1日頑張りましょう。
11時、53席が埋まるまで
11時開店。営業時間は火曜から土曜が11:00〜25:30、日曜・月曜が11:00〜24:00。深夜まで開いている街中華である。
昼休憩のサラリーマンが、ソース焼きそばと半ライスを頼んでいた。焼きそばはおかずになりますか、と聞かれて、なります、と即答している。おすすめを聞くと、返ってきたのは意外な答えだった。
野菜炒め。やっぱり町中華って野菜炒めがね、ベースで。
親子で来ていた2人は、30年通っているという。子どもが赤ちゃんに近い頃からだ。頼んだのはミソらーめんと生姜焼き。
小さい時から食べてる味っていう感じが。地元なんで、安心します。

11時43分、チャーハンラッシュ
11時43分、満席。ここから厨房の景色が変わる。
本当ですよ。これ全部チャーハン。こんな感じで出てくる。あらららら……みたいな。すごいでしょ。
店長は2つの鍋を同時に使う。片方でミソらーめんのスープを仕上げながら、もう片方でタンメンを仕上げる。合間に肉野菜炒め、広東麺、スタミナ炒め、チャーシューメン。注文は途切れない。
この鍋の前に立てるようになるまでには、時間がかかる。
昔は本当に、1から徐々に修行して、あっち(鍋)になるっていう感じでしたね。お昼のあそこっていうと、やっぱり2、3年かかります。

20年目の店長が、店を出ようとしている
この会社を選んだ理由を、三瓶さんはこう説明した。
ここのいいところって、自分で独立ができるんですよ。雇われ店長じゃなく。
今後の目標を聞かれて、答えは迷いがなかった。独立して、自分の店を持ちたい。できるだけ早く、42〜43歳で。つまり、この2〜3年のうちに。
ただし、出ていくことだけを考えているわけではない。
自分が抜けた後に、後釜として今いる子たちをしっかり育ててもらって、今と同じような店を作っていきたいですね。
最後に、いつも来る客への一言を求められて、こう答えている。
数ある飲食店の中から選んでもらって、美味しいよって言ってもらったりとか、色んな声もありますけど。今後もぜひ、同じような感じで使っていただけたらなと思っております。
店舗情報
店名 | 珍來総本店 草加駅前店(総本店直営) |
|---|---|
住所 | 埼玉県草加市高砂2-7-1 アコス南館1F |
アクセス | 東武スカイツリーライン(伊勢崎線)草加駅より徒歩1分 |
営業時間 | 火〜土 11:00〜25:30/日・月 11:00〜24:00(動画撮影時点) |
席数 | カウンター・テーブル計53席 |
主なメニュー | らーめん700円/創業らーめん500円/チャーハン850円/餃子5個500円/スタミナ炒め定食1200円 |
テイクアウト | 可(焼き餃子450円、チャーハン850円) |
創業 | 1928年 |
営業時間・価格は変更される場合があります。訪問前に最新情報の確認を。
動画で見る
ここまで書いてきたが、鍋を振る速度と音だけは、文字にすると痩せる。
満席の店内で、2つの鍋を同時に動かしながら、チャーハンを2分で上げ、そのあいだにラーメンのスープを合わせ、餃子を焼き、皿を出す。手が止まらないのに、急いでいるようには見えない。あの感じは映像でしか伝わらない。
チャーハンが列をなす27:04以降、そして大盛りが登場する23:26あたりは、ぜひ動画で。




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